胃十二指腸潰瘍
胃十二指腸潰瘍とは
胃十二指腸潰瘍とは、胃液という強い酸の刺激によって胃や十二指腸の組織が剥がれ落ち、内部からえぐられた状態となる病気のことです。
本来、胃は塩酸やペプシンなどの消化液を分泌して、食べ物の消化を行っています。この胃液が何らかの原因で、胃や十二指腸の組織も溶かして消化してしまう疾患で、消化性潰瘍とも呼ばれています。
また患者さんの97%以上が、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)に感染しているともいわれており、年齢別にみると、胃潰瘍は50歳前後の中高年に多く、十二指腸潰瘍はそれよりも若い30歳代に多い傾向があります。
胃十二指腸潰瘍の主な症状
胃十二指腸潰瘍の自覚症状で最も多いのが、みぞおちの痛みです。胃潰瘍の場合は、食事中から食後に痛みを感じることが多く、十二指腸潰瘍の場合は空腹時、特に早期に痛むことが多いという特徴があります。胸やけ、胃もたれ、吐き気、嘔吐、食欲不振を伴うこともありますが、自覚症状が全くない人もいます。
また潰瘍が形成されると潰瘍から出血することがあり、ひどい場合には便が黒くなることがあります。出血を起こした場合には、貧血を起こしたり、疲れやすさや顔色不良などがみられたりすることもあります。
さらに重症な場合は、頻脈、冷や汗、血圧低下、気分深い、吐血、下血などの症状が出現するため、このような症状が見られる場合は、できる限り早く医療機関を受診することが大切です。
胃十二指腸潰瘍の原因
胃十二指腸潰瘍の原因はさまざまで、粘膜による防御の働きと胃酸による攻撃とのバランスが崩れることで発症します。原因となるのは、ピロリ菌との関連や薬剤、ストレス、暴飲暴食、喫煙習慣、カフェイン摂取などが挙げられます。ピロリ菌の感染
ピロリ菌は、ウレアーゼと呼ばれる物質を産生することで、強い酸性環境である胃の中でも生きることが可能です。また、胃潰瘍の70%以上、十二指腸潰瘍のほとんどでピロリ菌の感染が証明されています。薬剤を原因とする発症
胃十二指腸潰瘍は、非ステロイド系抗炎症薬と呼ばれる薬を原因として引き起こされることもあります。この薬は、腰痛や膝の痛みなどに対して対症療法的に使用されることのある薬ですが、副作用として胃十二指腸潰瘍を発症するといわれています。胃十二指腸潰瘍の治療
胃十二指腸潰瘍では、プロトンポンプ阻害薬やプロスタグランジン製剤などの内服薬の使用が検討されます。潰瘍から出血があり、緊急に対応する必要がある場合は、胃カメラで止血術を行います。この際、貧血の程度によっては輸血も検討されます。また、胃十二指腸潰瘍では、病気を起こした誘因に対して対応策を講じることも大切です。例えば、ピロリ菌の関与が疑われる場合は、ピロリ菌を除菌するための抗生物質の使用も考えられます。なお、ピロリ菌の治療は、胃酸を抑える薬と2種類の抗生物質を、通常1週間飲むことで行われます。ピロリ菌の除菌が完了すると、胃潰瘍では80%、十二指腸潰瘍では95%前後の人で再発を防止することができるといわれています。
もし、鎮痛剤の関与が疑われる場合は、可能な限り痛み止めの使用を控えることを検討します。どうしても鎮痛剤が必要という場合は、薬の変更などの対処で様子見となります。
また、ストレスや暴飲暴食が原因と考えられる場合では、生活環境を整えて、少しでも潰瘍が生じにくい環境を整えることが大切です。
胃十二指腸潰瘍になってしまった方は、一度治っても再発する頻度の高い病気として知られているため、早期発見に努め、しっかりと治療を行いましょう。
この記事の監修
メディカルクリニックパレ水天宮前 代表
石井 浩統
略歴
2005年3月 福井大学卒業
2005年4月 福井県済生会病院 臨床研修医
2007年4月 福井県済生会病院 外科医員
2010年1月 福井県済生会病院 外科医長
2011年4月 日本医科大学付属病院高度救命救急センター 助教・医員
2024年4月 メディカルクリニックパレ水天宮前開院