肝のう胞

肝のう胞とは

肝のう胞

液体がたまった袋状のものをのう胞とよびます。肝のう胞とは、のう胞が肝臓にできたもの、つまり、肝臓の組織に水がたまっている状態をいい、健康診断で腹部エコー検査や腹部CT検査を受けた際に偶然発見されることが多い疾患です。

のう胞は1個の場合も複数の場合もあり、サイズは数mmから10cmを超えるものまでさまざまです。ほとんどは経過が良い良性疾患であり、基本的に心配はいりません。しかし、ごくまれに悪性化するケースもあるため、医師の指示に従い、定期的に検査を受けることが大切です。

肝のう胞の主な症状

肝のう胞は多くの方で自覚症状がないため、気付かず成長します。患者さんが感じる初期症状は、少しお腹が張っているという程度です。のう胞が大きくなると、腹部の膨満感や鈍痛、胃部の不快感、吐き気などが現れます。

腹部症状

肝のう胞が大きくなると、お腹の圧迫感や膨らんでいるような感覚が現れる場合があります。また、のう胞が周りの臓器を圧迫すると、痛みや不快感を生じる場合もあります。

消化関連症状

吐き気や嘔吐、消化不良などの症状が現れる場合があります。

全身症状

だるさや体重減少、微熱、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)などの症状が現れる場合があります。

合併症による症状

まれなケースですが、肝のう胞が破れたり、細菌に感染したりすると、突然の強い腹痛や熱などの急性症状が出る場合があります。このような場合は、すぐに治療が必要です。

肝のう胞の原因

肝のう胞の多くは、原因不明です。考えられる要因としては、出生時の奇形、遺伝的な要因、環境要因、ホルモンバランスの乱れ、寄生虫感染などが挙げられます。

出生時の奇形

出生時に存在する奇形の結果として肝のう胞が発症する可能性があります。

遺伝的な要因

生まれ持った遺伝的な背景により肝のう胞が発症する可能性があります。常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)※との関連が注目されています。
※複数の臓器にのう胞ができやすい遺伝性疾患

環境要因

お酒の飲み過ぎ、脂肪肝、慢性肝炎などが原因となる場合もあるとされています。

ホルモンバランスの乱れ

肝のう胞は、女性が発症しやすい傾向にあります。

妊娠中や閉経後などホルモンバランスが乱れやすい時期は、すでに存在しているのう胞が大きくなったり、新たなのう胞が形成されたりする可能性が高まります。

寄生虫感染

とても稀ですが、エキノコックスという寄生虫の感染により肝のう胞ができる場合があります。

肝のう胞の治療

無症状の小さいのう胞は、定期的に検査するだけで、特に治療を必要としません。のう胞が大きく、圧迫による腹部症状をきたしている場合や、のう胞内に感染を起こしている場合には治療を行います。

治療方法の主なものは、薬物療法、穿刺吸引療法、外科的治療で、炎症性、腫瘍性、寄生虫性など原因が明らかな肝のう胞では、原因に応じた治療を行います。

薬物療法

のう胞が大きくなる傾向にある場合や症状がある場合に、オクトレオチドやランレオチドによる薬物療法が行われます。

穿刺吸引療法

大きいのう胞や症状が強い場合に行われます。超音波やCTでのう胞の位置を確認しながら、お腹からのう胞に向けて細い針を刺し、のう胞液を吸い出します。液体を抜いた後、しばらくしてからまた液体が溜まってしまう場合が多いため、硬化剤を注入し、再発を防ぎます。

外科的治療

薬物療法や穿刺吸引療法で効果が得られない場合や、のう胞が非常に大きい場合に、外科的にのう胞を切開、切除することがあります。手術方法は主に開腹手術と腹腔鏡手術で、近年ではより体に負担の少ない腹腔鏡手術が広まってきています。
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この記事の監修

メディカルクリニックパレ水天宮前 代表
石井 浩統

略歴

2005年3月 福井大学卒業
2005年4月 福井県済生会病院 臨床研修医
2007年4月 福井県済生会病院 外科医員
2010年1月 福井県済生会病院 外科医長
2011年4月 日本医科大学付属病院高度救命救急センター 助教・医員
2024年4月 メディカルクリニックパレ水天宮前開院